重いものを持ち上げる時、
「ああ、重いな。もっと楽に持ち上げられればよいのに・・・」などと思ったことはありませんか?
ギックリ腰などで腰が痛い時は、立ち上がるのにも一苦労です。
「ああ、痛い。楽に立ったり座ったりできる方法はないものか。」などと感じる時はありませんか?
それがあるのです。
重いものも楽に持ち上げられ、腰が痛い時にでもあまり痛みを感じずに、立ったり座ったりできる、そんな夢のツールがあるのです。
それがパワードスーツなのです。
パワードスーツがどんなものなのか知らない人のために、どんなものなのかを説明していきます。
さらにはパワードスーツを開発したサイバーダイン社の、パワードスーツHALの実用化時期や値段などを書いてみました。
パワードスーツとは?
パワードスーツとは、元々はSFなどで小道具として使われた、機械・科学的に着装者の動きをフィードバックして再現するスーツ(アーマー)です。
使用者の身体の動きにより生じる人体の生体電位信号などを感知しそれに対応した動作をする、というのがパワードスーツの定義です。
人間がスイッチを押したり、ハンドルを回したりしないでも、身体を動かそうと「思っただけで」、その通りにパワードスーツを動かすのです。
人間が身体を動かそうとすると、その電気信号が脳から神経を経て筋肉まで伝えられます。
この時に微少な電気信号が身体の皮膚表面にまであふれ出ますが、それが「生体電位信号」というものです。
その「生体電位信号」は、「身体をどう動かそうとするか」のシグナルですので、その信号を検知してそれに合わせてスーツを動かせば、スーツは「人間が思ったとおりに動く」ことになります。
これがパワードスーツのおおまかな原理です。
現在では介護や重作業支援、集中トレーニング、その他身体機能を改善・補助・拡張するためのものです。
それを実現させたのがサイバーダイン社のパワードスーツHALというわけです。
海外では「生体電位信号」ではなく、身体を動かそうとする時の脳波を測定し、それによってスーツを制御する、というHALとは別方式のパワードスーツも開発中です。
こちらも原理的には可能と言われています。
このパワードスーツが登場するSFで最も有名なのは、なんといってもSF界の大御所ロバート・A・ハインラインが1959年に発表した「宇宙の戦士」です。
「宇宙の戦士」では、パワードスーツは強固な装甲と強大なパワー、それに他種類の武装を併せ持った、「人間戦車」のような存在として描かれています。
SFではパワードスーツはお馴染みのアイテムで、ハインライン以外にもジョー・ホールドマンの「終りなき戦い」や、ウィリアム・ギブスンの「クローム襲撃」その他、多数のSF小説や映画に登場しています。
このパワードスーツは、着用者の動きを皮膚表面の生体電位差から読み取り電動モーターでアシストするというもので、いわば電動アシスト自転車に似たアイデアなのです。
今回紹介するパワードスーツのHALという名称は、これまたSFファンにはお馴染みの映画「2001年宇宙の旅」に登場する、宇宙船制御用のスーパーコンピューターの名前でもありますが、サイバーダイン社のHALは、Hybrid Assistive Limb」という意味だそうです。
もう一つ、「サイバーダイン」と言えば、直ぐ思い出すのが映画「ターミネーター」ですね。
ターミネーターを製作したのがサイバーダイン社なのですが(映画では)、その名称をそっくりいただいて、現実の会社を設立してしまったのです。
その設立者が筑波大学教授だった山海教授というわけです。
映画に出て来る「サイバーダイン」や「HAL」を、そのまま社名や製品名にしてしまうあたりは、SF好きは思わず笑みを浮かべてしまうのではないでしょうか?
サイバーダイン社のパワードスーツHAL実用化時期
サイバーダイン社のパワードスーツHALの実用化時期ですが、このHALシリーズは既に実用化に入っています。
サイバーダイン社のみでなく、建設業界大手の大和ハウス工業株式会社は、2015年5月1日よりこのHALシリーズの販売を開始しています。
日本のみでなく、HALパワードスーツはドイツなど海外でも病院などで採用されたりして、多大な反響があったそうです。
サイバーダイン社の製品ではありませんが、無動力の歩行支援機「ACSIVE」というものもあります。
これは高齢者などの、歩行を支援する「歩行アシスト機器」というもので、名古屋工業大学の佐野明人教授と今仙技術研究所の共同開発によるものです。
これは重力とバネの力だけをつかって脚の振り出しをアシストするというもので、なによりも「無動力」、つまりバッテリーなどが不要というのが、最大の特徴です。
しかも約550gと非常に軽量で、値段も18万円と格安です。
日常でもみんながパワードスーツを使えるようになるのも近いかもしれませんね。
サイバーダイン社のパワードスーツHALの値段は?
サイバーダイン社のパワードスーツHALは、脚やその他の身体各部用に、各種のモデルがあり、モデルにより値段は異なります。
販売形式については、当初はサイバーダイン社の直接販売システムでした。
値段は一体約500万円から700万円を予定していたようです。
しかし、現在は大和ハウス工業株式会社などによるリース(レンタル)が主体になっているようです。
その値段は
ロボットスーツHAL自立支援用(下肢タイプ)188,000円/月
ロボットスーツHAL自立支援用(単関節タイプ)初期導入費用400,000円 130,000円/月
ロボットスーツHAL介護支援用(腰タイプ)初期導入費用100,000円 78,000円/月
などとかなりのものです。
又、現在の所はこのパワードスーツの販売は、全国の介護・福祉施設のみで、個人への直接販売は行っていません。
この個人への直接販売が行われていない理由ですが、サイバーダイン社の公式のコメントなどはありません。
これは私の想像にすぎませんが、この種の装置は装着の際の調整やメンテナンスなどを綿密に行わないと、危険が生じるからかも知れませんね。
例えば、パワードスーツで腕を真上まで上げる場合、装置の異常で真上を通り越して180度、つまり背中の方まで曲げてしまったら、大変なことになります。
そのような事故を防止するために、ある程度の知識のあるユーザー(この場合は介護・福祉施設とその職員)のみを販売対象にしたのではないかと、推測しています。
まとめ
小説や映画にでてくる夢のアイテムだったパワードスーツ。
それが今は実用化され、かなり高額ではありますが、国内外で実際に使われています。
月着陸や火星探査とならび、昔の夢が今は現実となり日常でも手軽に使えるものになっていくかもしれませんね。
今回はサイバーダイン社のパワードスーツHALの実用時期や値段についてでした。